2019年4月にリリースされたばかりのSTM32CubeIDE。初心者の方や採用を検討している方のために、基礎から導入までをわかりやすく解説していきます。
本記事を読むことで、STM32CubeIDEが何物なのか理解し、実際に開発を始めることができるようになります。
2019年5月15日 情報更新しました。
目次
STM32CubeIDEとは
まずはSTM32CubeIDEのことを簡単にご説明しましょう。
STM32CubeIDEとはSTMicrosystems社が公式で提供しているSTM32用の統合開発環境(IDE)です。中身はAtollic TrueSTUDIOとSTM32CubeMXを統合したものになります。
EclipseベースのIDEなので、Eclipseに使い慣れた方にはとっつきやすいです。
このIDEのリリースに伴い、TrueSTUDIOとSW4STM32を使った新規開発は非推奨となりました。STM32の開発はこのSTM32CubeIDE以外の選択肢はほぼなくなったように思います。
経緯をまとめると下記のようになります。
2017年12月 | STMicrosystems社がAtollic社を買収 |
2018年1月 |
Atollic TrueSTUDIO ver.9.00がリリース このバージョンからPro版の機能も含めて無料に |
2019年4月 |
STMicorosystems社がSTM32CubeMX ver.1.00をリリース TrueSTUDIOとSW4STM32での新規開発が非推奨に |
TrueSTUDIOとの違い
TrueSTUDIOがベースとなっていますが、その全ての機能がSTM32CubeIDEに引き継がれているわけではありません。ツールチェインとプラグインの観点でその違いをまとめました。
ツールチェイン
TrueSTUDIOにはARM用のツールチェイン以外にもMacやWindows用のものも入っていましたが、STM32CubeIDEにはARM用のものだけになっていました。
これはユニットテストをする時に少し困ります。通常ユニットテストはターゲットボード上ではなくPC上で行います。そうするとPC上で使えるツールチェインが必要なのですが、STM32CubeIDEには入っていないので、別途用意する必要があります。
特にWindowsで開発環境を整えている人にはちょっと面倒な話ですね。Windowsの場合はMinGWを入れるのをおすすめします。
プラグイン
プラグインの違いは設定項目で比較するとわかりやすいので、設定ウィンドウのキャプチャをご覧になってください。左からSTM32CubeIDE、TrueSTUDIO、SW4STM32です(SW4STM32はご参考までに)。
TrueSTUDIOやSW4STM32は、ほとんど使われない機能まで盛りだくさんな感じですが、STM32CubeIDEは、余計な機能を取り払ってスマートにわかりやすくなっています。
実はTeamの中にGitが入っていないなど、取り払い過ぎでは?と思う人もいるかもしれません。でも、Eclipseベースなのでプラグインで簡単に機能追加できます。
TrueSTUDIOとの機能差とプラグインの可否をまとめると下記の表になります。各機能の説明はインストール方法と合わせて後述します。
設定項目 | プラグインの可否 |
CMSIS Packs | 〇 |
Library Hover | 〇 |
Mylyn | 〇 |
Team | 〇 |
レビュー | × |
uC/Probe Proxy Preferrences | 〇※動作未確認 |
レビューだけインストールする方法が見つかりませんでした。TrueSTUDIO独自の機能なのかもしれません。
STM32CubeIDEのダウンロード
ダウンロードする場合は下記のURLより行います。
https://www.st.com/ja/development-tools/stm32cubeide.html
一度ダウンロードボタンを押すと各種情報を求められるので、素直に入力しましょう。後からメールが送られてくるので、メール内のリンクをクリックするとダウンロードできます。
STM32CubeIDEのインストール
インストールは非常に簡単です。ダウンロードしたインストーラの指示に従って進めていくだけです。
プラグインの導入
プラグインも必要なものを入れましょう。ここでは、TrueSTUDIOから機能削除されてしまったものと、私のおすすめのプラグインの導入方法をご紹介します。必要なものを選んで入れてくださいね。
CMSIS Packs
マイコンやマイコンボードの情報をダウンロードし、ドキュメントの閲覧や、周辺回路のレジスタ情報が参照できるようになります。これを入れなくても、レジスタを簡単に見れるようになっているので、必須ではないように思います。ドキュメント類を見たかったら入れておきましょう。
- 下記のURLから『CmsisPackPlugInX.X.X.zip』をダウンロードしてください。
https://github.com/ARM-software/cmsis-pack-eclipse/releases
- Eclipseのメニュー→Help→Install New Software…→Add→Archiveで先ほどダウンロードしたファイルを選択してください
Library Hover
関数等をマウスオーバーすると、その関数の情報をポップアップで表示してくれるやつです。TrueSTUDIOに入っていたプラグインです。Eclipse系のIDEにはだいたい入っていますね。
- Eclipseのメニュー→Help→Install New Software…
- Eclipse Repository – https://download.eclipse.org/releases/2019-03→Linux Tools→Library Hover help for devhelp documentationを選択してください。
Mylyn
タスク管理に使われるMylyn。TrueSTUDIOに入っていたプラグインです。これもEclipse系のIDEにはだいたい入っています。
- Eclipseのメニュー→Help→Install New Software…→Add→下記のURLを追加
Git
ソースコード管理ツールといえば、ほぼGitでしょう。Gitを使えるようにするには、Eclipseのマーケットプレイスから『EGit』を検索して入れましょう。
Subversion
もう1つの主要なソースコード管理ツールといえはSubversionですね。Subversionを使っている方は、Eclipseのマーケットプレイスから『Subclipse』を検索して入れましょう。
uC/Probe Proxy Preferrences
様々なデバッグをグラフィカルに行えるツールです。Live Expression等の機能で十分なので不要に思います。TrueSTUDIOに入っていたプラグインですね。下記の手順でインストールできますが、動作未検証なのはご了承ください。
- Eclipseのメニュー→Help→Install New Software…→Add→下記のURLを追加
日本語化
TrueSTUDIOはインストール時に言語が選べましたが、STM32CubeIDEは選べません。日本語化したい場合はPleiadesを入れましょう。
下記のURLからプラグインをダウンロードして、インストールはその中に含まれる『readme/readme_pleiades.txt』を読んで行ってください。
http://mergedoc.osdn.jp/#pleiades.html
Doxygen
Doxygenの設定ファイルをGUIで変更できるようになり、ドキュメントの生成もEclipseの画面から実行できるようになるものです。Doxygenでドキュメントを書いている人におすすめのプラグインです。
Eclipseのマーケットプレイスから『eclox』を検索して入れてください。
ダークテーマ
疲れ目対策や、単純に黒系がお好みの方におすすめのプラグインで、メニューや背景を黒系に変更してくれます。手動でもできないことはないのですが、設定箇所が点在しているため、割と苦労します。適当に済まそうとすると、背景と文字が同じ色になってしまって、まったく文字が読めない、なんてこともよくあります。
その辺のことをまとめてうまいことやってくれるのが、この『Darkest Dark Theme with DevStyle』です。
Eclipseのマーケットプレイスから『dark』を検索して入れてください。
使いやすくするための設定方法
Eclipseをもっと使いやすくするための設定を下記の記事でまとめています。よければ参考にしてください。
開発~デバッグ
インストール後の使用方法については公式の動画がとてもわかりやすいです。解説は英語ですが、パソコン上の操作をそのまま録画してくれているので、まったく問題ありません。
おすすめの記事:【便利】STM32CubeIDEでprintf【UART編】
おすすめの記事:【サンプルあり】STM32のFreeRTOSの使い方まとめ